アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

ガボン国立公園での密猟による危機に関するプレス・リリース


Elephant Aid Internationalの記事を、AJFが翻訳・紹介するものです。
引用する際には、原文にあたってください。
Parcs Gabon Press Release on Poaching Crisis

ガボン国立公園での密猟による危機に関するプレス・リリース

Elephant Aid International 2013年2月5日

リーブルビル、ガボン(2013年2月5日)
密猟によりガボンのゾウ頭数が激減したことを示す衝撃的な統計が発表された。 ミンケベ国立公園だけでも2004年からおよそ11100頭のゾウが消えていっている。 その多くは過去5年間のうちに殺されたものであろう。

ガボンはアフリカ大陸の熱帯林の13%を占めているが、アフリカの森林ゾウの半分以上にあたる4万頭以上がここに棲息していると推測される。

ミンケベ国立公園のゾウ頭数のデータ調査を分析し続ける野生動物保護団体 (WCS)のフィオナ・メズルス博士曰く、「2012−13年に既に調査済みのものと同地域の2004年分のものを比べると、44−77%のゾウが殺されていて、それはすなわち2004年以降11,100頭のゾウがいなくなってしまったことになる。」

WWF やWCSと共に活動する国立公園局(ANPN)は、2012年10月に、ミンケベ国立公園とその緩衝地帯の野生動物調査を開始した。同地域にわたる野生動物数と人間の影響を調べ、近年特に問題になっている急激なゾウの密猟増加における影響力の調査がその目的であった。この調査はANPN、CITES MIKE(ゾウ違法狩猟監視)プログラム、および米国魚類野生生物局の基金により実施された。

ガボンではかつてよりゾウの群れの減少は他の地域に比べると、それほど急速には進んでいないと思われていたが、過去2,3年ほどで密猟事件が相次ぎ、ガボン国立公園局職員が目撃した2件のゾウの大虐殺のようなケースも含まれる。2011年4月、ウォンガウォンゲ野生動物保護サバンナ内で、27頭のゾウが殺されているのを公園職員が発見した。密猟者はまずゾウを殺し、チェーンソーを使い象牙を奪い、死体をそのまま放置して腐敗するにまかせた。ウォンガウォンゲ地域の大部分を覆う熱帯林には数百頭の死体が隠されていると公園職員は予想している。

2011年6月、ミンケベ国立公園およびその緩衝地帯において、人々の活動の大幅な増加が明らかになった:300人規模の小さなキャンプだった金採掘者の数が5000人以上にも膨れ上がり、金採掘者の他にも密猟者、軍人、麻薬密売人も入ってきた。公園当局は極東からの象牙の需要増加と価格上昇の結果、毎日50-100頭のゾウが殺されていると推測している。

別のWCSの一人、 Dr. Fiona Maisels 曰く『種の保護のためには、ゾウが棲息する国ー象牙密輸入のルートに沿って最終目的地の極東までの道ーの間での、連結した世界規模の努力が必要です。ゾウの絶滅を防ぐのに、我々に遺されている時間はわずかしかないのです。』

先週、推測されていたミンケベ内でのゾウの大量死が科学的根拠によって証明された。

  • 司法警察は、水・森林省、ANPN、NGO「コンサーベーション・ジャスティス」の職員と共働して、リーブルビル中央のモレ港で、トーゴに向かうカーゴボートに重量176キロの20本の象牙がまさに積み込まれようとしているところを取り押さえた。
  • ANPN職員がミンケベ国立公園で軍事的支援を受けて、ガボンへ75kmも侵入したきた重武装のカメルーン人密猟者11人を逮捕した。
  • ミンケベ内で憲兵を伴ったANPNの別のグループが、大口径ライフルで武装した密猟者に襲撃された。彼らは6本の象牙を所持した罪で逮捕された2人のポーターを解放しようとやってきたのだった。
  • ムワニャ国立公園内で4本の象牙を所持したカメルーン人密猟者を逮捕した。
  • チバンガにて公用車で50キロの象牙を運んでいた憲兵を逮捕した。
  • ANPNとWCSの職員がウォンガウォンゲ内で殺されたばかりの5頭のゾウを発見した。
  • 1月30日シンガポールにておよそ2トンの象牙を取り押さえたが、その出所はいまだ不明である。
  • 2012年にアフリカ全体で殺されたと推定されるゾウの数は31800頭にも上る

ANPN局長リーホワイトCBE教授によれば、「過去3年間で我々はさらに400人の公園職員、120人の兵士、30人の憲兵を増員し、象牙の闇取引が原因で起こる違法なゾウの虐殺をやめさせる戦いを挑んだが、そんな我々の努力にも関わらず、毎日多くのゾウの命が失われている。この状況を一刻も早く改善しなければ、アフリカのゾウの将来は破滅の道をたどることになるだろう。これらの新しい結果は、状況がいかに深刻かということを明白に示している。この象徴的な種が生き残れるかどうかは、来るこれからの10年における我々の行動にかかっている。」

ガボン政府はこの密猟拡大の注意すべき動向に対して強い姿勢で対応している。2012年6月26日アリ・ボンゴ・オンディンバ大統領はガボンで押収され山積みにされているすべての象牙を燃やし、以下のように語った。「違法は国際市場により地域の象牙の値段が著しく上昇し、それが原因でガボンのゾウは狙われている。今こそ国際社会と手を取り合い、この戦いに挑もうではないか。もし我々がこうした動きを早急に食い止めることができなければ、アフリカのゾウは全滅してしまうだろう。ガボンにおいて、野生動物への犯罪を一切容認しない。」

最近、米国魚類野生生物局国際保護部東南アジア・アフリカ課のリチャード・ルジエロ課長は、以下のように述べた。「我々は真のリーダーシップを示すガボン当局と緊密に協働しているが、これは地球規模の問題で地球規模の解決法を探し出さなければならない。」

「これらの国際犯罪ネットワークを壊滅させるためには、法的措置実施機関の国際的協力がこの上なく必要である。」とWWFの違法野生動物貿易キャンペーンのアフリカ中央部は明言し、さらには「我々が今存在するアフリカ中央部のゾウを失いたくなければ、違法象牙貿易がガバナンスを腐敗させ、国家の安全や経済の発展を脅かす深刻な犯罪だという認識をしなければならない。」と続けた。

ガボンの故オマール・ボンゴ・オンディンバ大統領を説得し2002年に13の国立公園ネットワーク建設を進めるための重要な役割を果たし、また現在は新しく海洋公園建設を促すイニシアティブを指導しまた漁業の改良の働きかけを行っている探検家のマイク・フェイ博士は、「ミンケベ地域での保護の努力は、増大する象牙密猟の圧力に対応することに失敗し、悲惨な結果に終わった。我々はどのように任務を果たすのかを考え直し、ゾウを救うために決定的な行動をとらなければならない。」とした。

水・森林省とパートナーシップを結ぶNGOコンサーベーション・ジャスティスのリュック・マトによれば、「残念ながら、ここ数か月のガボン当局によって何件もの逮捕があり、組織化された象牙取引について我々が収集された情報はミンケベのANPNのデータにより裏付けられた。毎年、1000頭から3000頭のゾウが象牙のために殺されている。ゾウを救うためには協調した努力が必要だ。最近の逮捕、知事や憲兵に対する訴訟は、この状況を改善していくためにガボン当局がとろうとしている姿勢を明らかに示している。」と話した。

このような結果を踏まえて、アリ・ボンゴ・オンディンバ大統領は、商業的象牙密猟を犯罪とする新たな法律を制定し、服役期間を延ばし象牙密猟者は最低3年の、犯罪組織による密猟および象牙違法売買には15年の刑を課した。閣僚会議で大統領は緊急に、すべての安全と野生動物取り締まりサービスに、国家的緊急事態における、強力で協力的で断固とした対応を呼びかけた。

自然資源管理や統治の強化、また野生動物犯罪と例外なく結びついている汚職の撲滅といった明確な権限を持って、防衛省の支援を受け、すべての行政や法律や治安や自然資源管理のための機関を一同にまとめるために国立資源保護センターが作られる予定である。


独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施した「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」のフォローアップの一環としてこのページを作成し、公開しています。

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