アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

違法アサルトライフルがアフリカのゾウにもたらす致命的な打撃


The Asahi Shimbunの記事を、AJFが要約して翻訳・紹介するものです。引用する際には、原文にあたってください。
Illegal assault rifles taking deadly toll on African elephants

違法アサルトライフルがアフリカのゾウにもたらす致命的な打撃

The Asahi Shimbun 2013年6月9日

コンゴ共和国、カボ
AK-47アサルトライフルはアフリカの様々な国々における内戦で多数の死者を出してきたが、今度はそれがマルミミゾウの殺害に使用されている

その大きな火力が、象牙の密猟者によるこのライフル使用を急増させた。

何名かの密猟者によるゾウの虐殺の一例が、コンゴ共和国北部のカボという村で発見された。この村は、密猟を取り締まるために森林省と共働しているWildlife Conservation Society (WCS)の基地となっている。

ある保全倉庫には密猟者から押収した約1ダースの象牙が置かれており、最も大きいもので長さ1.5m、重さ16kgになる。

マルミミゾウは、アフリカ中央部に位置するコンゴ共和国や隣のガボンで見られる。

このマルミミゾウの象牙の品質は、その硬さから最高級であるとされている。

森の中で見つかるゾウの死体には頭に巨大な弾痕があり、それは彼らがアサルトライフルによって殺されたことを明らかにしている。武器の多くもまた密猟者から押収されている。

森の警備を支援しているWCSにて働く西原智昭氏は、「ゾウの皮膚は硬いため、ショットガンでは殺すことができません」、「AK-47は続けて発射することができるため、より致命的です。」と語った。

密猟者が使用するアサルトライフルのほとんどは、かつてアフリカの内戦で使用されたものである。1990年代後半、コンゴ共和国で激しい戦闘が起きた。

世界自然保護基金(World Wildlife Fund:WWF)ジャパンの自然保護室ダイレクターを務める岡安直比氏は、当時アフリカで研究員として働いていた。

「AK-47は民兵へ無料で配られていました。」「内戦が終わった後、そのライフルは政府によって回収されることなく、密猟者が使用しました。」と、彼女は語った。

ライフルの所有は違法であるが、闇市場にて一丁約4000円で買うことができる。

ライフルの多くは、未だ内戦が続いている隣のコンゴ民主共和国(DRC)から持ち込まれたものであると考えられている。

野生生物取引を監視するTRAFFICによれば、象牙の押収量が増加していると言う。

2011年には35トン押収され、これはワシントン条約としても知られる絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES))が象牙の国際取引を禁止した1989年以来最も大きい数字である。

アサルトライフルの犠牲となっているのはゾウだけではない。昨年コンゴ共和国では、野生生物の保護のために働く7名が、密猟者によって射殺された。この攻撃は、密猟の取り締まりに対する報復であったと考えられている。

密猟された象牙のほとんどは、象牙が富や社会的地位の象徴と賞されている、中国やタイに渡る。需要のさらなる増大が、アフリカにおける密猟を加速させるという懸念がある。

けれども、密猟に対する国際ネットワークを構築するための努力は始まっている。

タイにて3月、CITESに調印した国々の間で会議が開かれた。コンゴ共和国代表は、「密輸業者が密猟者らにAK-47を提供している。象牙の需要をなくすことを最優先すべきである。」と述べた。

会議では、国連環境計画(UNEP)の当局者が、過去10年間で象牙密猟が倍増し、違法売買の数は3倍になっていたことを述べた。

WCSの研究員らは、アフリカ中央部5カ国のマルミミゾウの60%が殺されていると述べた。

アフリカ中央部の10カ国は、密猟者の取り締まりを強めるべく、協調して努力し始めている。

この10カ国は、共同国境警備体制の確立を考えている。

昨年11月に開かれた、野生生物の違法取引に関する国際会議で、米国政府は、これらの生物を保護するためのグローバルネットワークを構築するために100,000USドルを提供すると発表した。

「野生生物から違法に利益を得る者は、我々の国境と経済の基盤を掘り崩しているばかりでなく、まさに次の世代から盗んでいるのである。」と、ヒラリー・クリントン米国務長官は語った。


独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施した「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」のフォローアップの一環としてこのページを作成し、公開しています。

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