アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

人間の欲深さと汚職がどれほどゾウたちを絶滅に追いやっているのか


One Green Planet「How Human Greed and Corruption is Driving the Extinction of Elephants 」を、AJFが翻訳・紹介するものです。

人間の欲深さと汚職がどれほどゾウたちを絶滅に追いやっているのか


2015年06月16日  One Green Planet By Lauren Kearney 

今年の4月下旬に、コンゴ共和国のDenis Sassou Nguesso大統領は、象牙や犀角のような野生動物の体の一部分への需要の増加の問題に対処するため、約5トンの象牙に火をつけた。それはブラザビルで実施された野生生物国際違法取引に関する国際会議のあとの式典にて行われた。密猟は、コンゴ共和国と他の多くのアフリカの国々で主要な問題であり、多くの種を絶滅に追いやりつつある。

すべての動物は、生態系において重要な役割を果たしている。例えばゾウは、その糞の中で種子が発芽することによって植物の成長を可能にしながら、種子をあちこちに散布し、それが最終的に他の動物をも養う樹木とその産物を供与するのである。ゾウの絶滅は、地球の大惨事を招くことを意味する。ゆえに、彼らを生存させておくのは極めて重要であり、そのための方法は、ゾウの殺害に拍車をかけているもの、すなわち野生生物の違法取引と闘うことである。コンゴ共和国の首都での象牙を燃やすイベントが違法取引に反対する態度を象徴するのであろうが、その問題の核心に迫ることが最も重要である。

「実際の仕事は、まだ我々の目の前にあります」とPALF(Project for the Application of Law for Fauna Republique of Congo)のコーディネーターであるNaftali Honig氏はOne Green Planetに説明する。 「まず第一にゾウの殺害を阻止するのが真のゴールであり、これを実現するためには、違法取引業者達と密猟者達に取引を真に思いとどまらせる必要があります。」

コンゴ共和国政府は違法な野生生物の違法取引に対して、彼らを非難する目的で、押収した違法象牙を燃やすという演出を行なったが、舞台裏では、このような場合ではないようだ。  

コンゴの密猟の語られざる真実

2013年に20,000頭以上のゾウが、ただ象牙だけのために殺害された。もしもこの状態が急激に続いたら、ゾウの未来は絶望的であろう。話が密猟ということになると、欧米にいる私たちは全体像を見ていないようである。多くの人は、大部分の密猟者達は、非常に貧乏な個人で、単独でゾウ、サイ、その他の野生動物を狩猟していると固く信じている。

「彼らが組織化されていない個人であるというのは真実ではありません。」とPALFの探知犬プログラムのArthur F. Sniegnon氏は述べている。「例えば、数日前、私はカメルーンと中央アフリカ共和国の3つの密猟グループの雇い主に同行し、彼は私に彼の狩りの弾薬を見せました。 1つの弾薬当たりの価格は25.000 CAF(アフリカ中央部地域フラン)でした。個人の密猟者は、これを買う余裕はありません。それができるのは、貧しい人に銃を賃貸して、定期的な「獲物」[すなわち、ゾウやサイ]を期待している金持ちのパトロンです。」

本質的には、現場の密猟者達は、野生生物の体の一部分の取引に利権を持っている裕福な個人の命令で働いている。地元の人々の貧困は、動物の殺害によって現金の報酬を得る動機になるため、野生動物の密猟が永続化する上で大きな役割をしている。悲しい現実は、密猟された1頭のゾウは闇市場で21,000ドルで販売されているが、エコツーリズムが持たらすことができる1頭のゾウの利益の価値は160万ドルに達する。密猟をさせられている地域の人々への短期的な見返りは、持続不可能であり、長期的にみるとそれだけの価値はない。もし政府が土地本来の生態系を維持し、コンゴ共和国におけるエコツーリズムを増進するために協調のとれた努力をすれば、人間と動物が調和して共生することができるだろう。

汚職と殺害

2014年9月に、350ポンド以上の押収象牙を保有した罪でひとりの象牙の違法取引業者が2人の警察官と一緒に逮捕された。コンゴ共和国の法律が汚職役人に最高刑を要求するのに、なぜこれらの3人の男は罪に問われないのだろうか。

汚職と刑罰の免除である、とPALFのNaftali Honig氏はOne Green Planetに述べている。

コンゴ共和国には、野生生物の殺害や体の一部分の販売を規制・防止するための法律は存在はしているが、それらは公正に適用されていない。法律を犯している腐敗した大臣らや政務官らは、厳しく処罰されるべきである。しかし、利害関係のせいで彼らは取引を持つことができ、あるいは野生生物の違法取引業者に適用されるべき法律を単に知らないために、これらの犯罪者の大部分が無罪放免にされてしまう。

「法執行に精通した人々が私たちの管轄区域で必要とされています。」とコンゴ共和国の裁判所組織で働く情報筋は述べている。 「政治的に、私たちは野生生物保全の問題に対処できるリーダーを必要としています。彼らは、NGOや密猟と闘っている人々が支援を受けるために奨励する必要があります。これは、市民の管理を受け入れたり共同作業を促進したりするひとつの好機です。」

さらに野生動物を保護することになっているレンジャー達の中には腐敗している者もいる。彼らの給料を補うために違法取引をする者がいる。しかし、別のレンジャーは、彼らの命をかけて野生生物を保護している。

PALFは助けるために何をしているか?

PALFは探知犬ユニットを持っていて、3頭のマリノワ犬(ベルジアン・シェパード・ドッグ)は違法な野生生物の製品を検出することができる。しかし、その影響力の普及なしでは達成できない。

「人々は捜査を避けるために犬のハンドラーにお金を支払おうとします。他の人は密売品が押収されると”交渉”を試みます。」と探知犬ユニットで活動しているArthur F. Sniegnon氏は言う。

彼によると、3月末にブラザビルで、有名な象牙の違法取引業者と象牙の美術品の製造業者を逮捕するための作戦が計画された。長期的な調査の後、Arthur氏と彼のチームは犯罪者の土地に侵入した結果、家の外に追われ、犬たちやチームの人々が負傷した。にもかかわらず、PALFは多くの文書や証拠を得たが、それでも、未だにコンゴ共和国の司法制度は沈黙していて、象牙違法売人達は刑務所の外にのさばっている。

悲しいことに、野生生物の違法取引の終焉の兆しは今のところほど遠い。しかし私たち全員は、グループで活動するPALFのような集団を支持することで、密猟者達が法制度の監視の中で扱われている方法を変えるための役割を果たすことができる。また私たちは、その結果である製品を購入しないことで、この残虐な産業に終止符を打つ手助けをすることができる。購入をやめれば、殺害を阻止できる。加えて、コンゴ民主共和国における野生生物の観光業、―特にヴィルンガ国立公園において―は地域経済を強化し、野生生物の保全を推進するための手段と言われてきた。動物の保護に基づく産業を創り出すことで、むしろ野生生物を絶滅させるよりも、地元の人々は、違法取引を阻止しつつ、彼らの周りの自然環境をより良く維持していくことに従事できるのだ。

PALFについての詳細を学び、彼らの仕事に協力するために、こちらをクリックしてくださいhttp://palf-enforcement.org/about-us/。コンゴ民主共和国のエコツーリズムの詳細については、こちらの記事を参照してくださいhttp://www.onegreenplanet.org/environment/oil-explorers-keep-your-hands-off-virunga-africas-oldest-national-park/。


独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施した「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」のフォローアップの一環としてこのページを作成し、公開しています。

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