アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

熱帯材、象牙を通して見える日本と中国、アフリカ熱帯林との関係

カボンの2006年、2007年ごろのデータでは、一番の輸出先は中国で、二番目は旧宗主国のフランス、次いでポルトガルと続くが、日本もけっこう多い。このことを知っている日本人はほとんどいない。日本の伐採業者も商社もガボンに進出していないが、国際市場とかで買い付けが行われているのだ。それなのに、一部の日本人は中国を悪者にして熱帯林を破壊しながら熱帯材を買い付けていると非難している。

日本と中国は、象牙の問題で共通の課題に直面している。象牙は1989年にワシントン条約の取引禁止リストに加えられ、それ以来、取引が完全に禁止されている。しかし現在でも、アフリカのサバンナそして熱帯林でゾウが殺され、その象牙が密かに取引されるという事業が起きている。現在、世界中で象牙の需要があるのは中国と日本に限られているから、その象牙の行先が中国と日本と考えられる(表1参照)。


表1. 日本と中国の象牙の需要比較

需要内容 素材
日本 印鑑、三味線のバチの材料としての需要 ・マルミミゾウ(硬くて長持ちするシャープでクリアーな彫り上がりになるハード材)
※マルミミゾウの象牙の行き先として最も可能性が高いのは、ハード材需要が世界で一番多い日本なのだ。
中国 飾り物、置物、彫り物やアクセサリー向けの需要 ・サバンナに住んでいるゾウの象牙
・熱帯林に住んでいるマルミミゾウの象牙

マルミミゾウの象牙がアフリカ中部の熱帯林からどうやって日本へ届くかについて、以下のルートが考えられる。

(1)アフリカ中部と中東を結ぶイスラム教徒の商業のネットワーク
日本や東南アジア諸国の税関で象牙の密輸が判明した際に聞くのは大体このルートである。コンゴ民主共和国を通り、 ケニア等東アフリカに入り、その後、アジアへ輸送されることがあり、日本が最終目的地と思われる象牙が、台湾、中国、シンガポールなどで摘発されてストップするケースもある。

(2)アフリカ中部から南部を経由するルート
2002年と2007年に、南部アフリカ諸国の象牙在庫が例外的に国際取引を許可された。 ソフト材の象牙(サバンナにいるゾウの象牙)のオークションに参加した日本の象牙 組合の人がハード材も見たという話もある。

(3)アフリカ西海岸からの密入ルート
アフリカ西海岸のマルミミゾウの象牙の多くは、カメルーンに回り、西アフ リカ人の商業ネットワークを経て、中東あたりに届き、そのあと、アジアに密輸 されるようだ。


<出典>
「アフリカNOW No.93」はこちら
「アフリカNOW No.93―アフリカに進出した中国企業による開発の課題[西原智昭] A half year with a Chinese oil company in Loango National Park」はこちら
「第二回 アフリカ熱帯雨林地域での開発業と先住民」記録はこちら
「第一回 アフリカ熱帯林地域での自然環境と野生生物」の質疑応答はこちら

  
独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施する「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」の一環として、このページを作成・公開しています。

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