アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

マルミミゾウは減少し続けている


密猟者がさまざまな形でアクセスできる熱帯林ではマルミミゾウが減少している

(2011年8月16日、ニューヨーク)野生動物保護協会(以下WCSと略す)及び提携団体による最近の研究によると、道路、入植地、及びそれ以外の地点からの熱帯林へのアクセスを制限するかどうかが、は中央アフリカに住むマルミミゾウの生存に大きく影響を与えている。

研究によると、道路や川などの近くの熱帯林へと通じる入口では密猟が増加し、ゾウの数が減少したという。マルミミゾウが現在も生息する国では大抵道路、その他のインフラ設備の際の密猟防止の取り組みが不十分であり、サバンナゾウの知名度の低い近縁種であるマルミミゾウは絶滅の大きな危険に侵されている。

この研究は「Ecological Applications」というジャーナルの最新号に掲載された。研究は、プリンストン大学のチャールズ・B・ヤキューリック(以前はコロンビア大学所属);WCSのサマンサ・ストリンドベリ; WCSおよびスターリング大学のフィオナ・マゼル; またWCSおよびマックス・プランク鳥類学研究所のスティーヴン・ブレークらによってなされた。

"マルミミゾウの生息地へのアクセス状況とその影響を究明する試みは当然にも複雑なものになるが、基本的な考え方は明白なものであり、我々の研究の成果は、熱帯林へさまざまな形でアクセスできることはマルミミゾウ及びその他多種多様な野生動物に有害であるという仮説を裏付けるのである、"とWCSのサマンサ・ストリンドベリ博士は説明する。

マルミミゾウの生息密度に対する道路の影響を分析する従来の研究結果を踏まえ、研究者達は広範囲に及ぶ地域内でゾウの排泄物の位置を数え位置を追っていくという作業により、さまざまな形でのアクセスの影響を研究した。マルミミゾウは捕まえにくく、直接数えることが難しいため、排泄物を数えていくことは大変重要であり、これらの排出物がゾウの数を大まかに示している。

この研究で使われたアクセスポイントに関する変数は、入植地、道路、川までの距離そして、カメルーン、中央アフリカ、ガボン、コンゴ共和国、そしてコンゴ民主共和国内に位置する五つの国立公園内のそれらの全ての組み合わせを含む。ゾウに関するデータはCITES(日本では「ワシントン条約」の名で知られる)によるゾウの違法狩猟監視プログラムの援助の下、集められたものだ。 この研究によると、マルミミゾウなどの野生動物の狩猟による負の影響は、入植地などのアクセスポイントからずっと遠くの地域まで拡大しているという。これらの野生動物の回遊範囲が広範囲に及ぶからである。 研究者によると、調査中の五つの国立公園の間でも、地形の違いにより人間のこれら野生動物への影響の度合いが変化するのだという。例えばコンゴ民主共和国のサロンガ国立公園内には、いくつもの入植地が存在し、最近材木搬出の為の道路建設により人が入り込むようになったばかりのガボン共和国内のミンケベ国立公園と比べ、サロンが国立公園付近でははるかにゾウの排泄物が少ない。 この研究から、コンゴ盆地での地域単位、また国家単位、双方での開発計画の必要性がうかがわれる。 この研究の第一人者であるチャールズ・ヤキューリック博士によると、もともと人々から遠く離れ、アクセスが難しかった地域への人間の出入りの急増はゾウ及びその他多種多様な野生動物にとって計り知れない影響がある。マルミミゾウはこれらの地域の環境の状態を示す歩哨動物であり、マルミミゾウの消滅はさらに多くの野生動物の減少の予兆しており生態系全体の衰退の可能性も意味している。 WCSアフリカ事業の責任者であるジェームス・デッチ博士は以下のように述べる。「中部アフリカの熱帯林は人口の増加とインフラ設備の拡大によりますます圧力を受けている。マルミミゾウとその他多くの種の生態系的な必要条件を認知し、中部アフリカの開発政策の協力の下、環境保護計画を立てていく必要がある。」 WCSおよびマックス・プランク鳥類学研究所のスティーヴ・ブレークは更に以下のように付け加える。「残念なことに、政府、開発支援期間、そして私企業という三つのインフラ開発に取り組む全ての団体はかなり前からこの事実を知っているにもかかわらず、ローカル、国規模、またいくつかの国をまたがる地域レベルでのインフラ計画にほとんど改善が見られない。この研究は適切な処置がなされるための時間がほとんど残っていない、ほぼ間に合わないに等しい状態であるという事実を強調している。幸いなことに、中部アフリカ諸国をつなぐインターステイと・ハイウェイ建設にあたって、戦略的に人々の社会福祉を最大限充実させ、生態系の断片化やアクセスの拡散などの生態系への影響を最小限にすることがまだ可能である。問題は、この事業の想定事業費は、現在私企業により行われている全てのインフラ工事の費用を上回っており、私企業にとってコストの削減が最優先であることだ。他の多くの環境問題と同様、世界があともう少し資金を拠出する準備さえあれば、私たちは、自然と人間比較的双方にとってよい関係が築けるであろう。

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独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施する「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」の一環として、このページを作成・公開しています。

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